クルマに乗る人の安全のため、そして快適な道路交通環境のため、欠かすことのできない交通法規。ドライバーなら誰もが遵守を心がけているものですが、中には知らず違反してしまっている人も……。そこで、うっかり違反をしないよう、意外な交通法規をまとめてみました。
<目次>
・イヤホンをしたままの運転
・体調不良時の運転
・信号待ち中のドライバー交代
・高速道路で追い越し車線を走行し続ける
・追い越し車線のクルマを左の車線から追い越した
・フロントウインドウにスマートフォン用のスタンドを装着
・後部座席に座った同乗者にシートベルトの着用を促さなかった
・幼児がチャイルドシートをいやがったので大人に抱っこしてもらった
・ながら運転など、状況によっては違反にならない
イヤホンをしたままの運転
音楽が好きな人の中には、常にイヤホンやヘッドホンを携帯し、スマートフォンからの音楽を楽しんでいる人もいるでしょう。運転中のスマートフォン操作が“ながら運転”に該当し、道路交通法にて違反と定められているのは、よく知られています。では、運転中のイヤホンやヘッドホンの使用はどうでしょうか?
実は、道路交通法でイヤホンやヘッドホンの使用を禁止している条文はありません。ですが、もし事故を起こしてしまった場合、「安全運転の義務」を定めた第70条「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」の違反とみなされ、刑罰を受ける可能性があります。
また現在、多くの都道府県で「安全運転に必要な音、または声(緊急車両のサイレンや警察官の指示など)が聞こえない状態で自動車を運転してはならない」といった旨の条例を定め、運転中のイヤホンの使用を禁じています。
イヤホンの着用でサイレンや指示が聞こえなくなるおそれがあるため、音楽を再生しているかは関係ありません。同様にハンズフリーイヤホンを使用しての通話も違反に該当します。電話連絡は、安全な場所できちんとクルマを止めてから行いましょう。
体調不良時の運転
体調を崩したときや怪我をしたとき、多くの人は病院にかかります。このとき、患者自らが運転して病院に向かうと、交通違反となる可能性があります。
道路交通法第66条において「何人も過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」と、定められているためです。
体調不良時は運転を控え、誰かに運転してもらう、あるいは公共交通機関を利用して病院に向かうようにしましょう。
また、この条文では「過労状態」も指しています。違反になることはもちろんですが、疲れているときの運転は注意散漫や居眠り運転につながり、とても危険です。長時間、運転するようなときには、あらかじめ休憩時間を予定に組み込み、体力にも気持ちにも余裕をもった運転を心がけるといいでしょう。
信号待ちでの運転手交代
赤信号に変わった直後の交差点。ちょうどいい機会なので急いで車外へ出て、同乗者とドライバーを交代する――。
こんな場面を見かけたことはあるがあるのでは? この“信号待ち中のドライバー交代”は違反となるのでしょうか。
道路交通法第44条により、交差点内と交差点から前後5メートル以内、あるいは横断歩道や自転車横断帯から前後5メートル以内は「駐停車禁止」と定められています。ドライバーがクルマから降りた状態は「停車」なので、上記の範囲内でドライバー交代を行うと駐停車禁止違反となるのです。
駐停車禁止でない場所であっても、ドアを開けた際に後方からきたオートバイや自転車、隣車線のクルマに危険を及ぼすことで、道路交通法第71条4の3「運転者の遵守事項」の定める「安全を確認しないで、ドアを開き、又は車両等から降りないようにし、及びその車両等に乗車している他の者がこれらの行為により交通の危険を生じさせないようにするため必要な措置を講ずること」に該当し、処罰を受ける可能性があります。
安全のため、緊急時のぞいて路上でクルマから降りることは避けたいもの。ドライバーの交代は、路肩や駐車場など安全な場所に移動してからが安心です。
高速道路で追い越し車線を走行し続ける
高速道路で走行車線を走行中、混んできたので追い越し車線へ。高速道路を利用していると、頻繁に見かける光景です。
でも、追い越し車線は、文字通り“追い越しのため”の車線。道路交通法第20条第1項で「車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない」と定められており、追い越し車線を走行し続ける行為は「車両通行帯違反」に該当します。
よくベテランドライバーから「首都高速の右側車線は追い越し車線じゃないから、走行してもいい」といった話を聞きますが、これは誤りです。条文にあるように高速道路でなくても、原則として左の車線を走行しなくてはなりません。降り口や分岐、合流が頻繁に発生する首都高速では、よほどのことがない限り車両通行帯違反の取り締まりを行わないため、このウワサが立ったとされています。
追い越し車線のクルマを左の車線から追い越した
走行車線をゆっくりと走るクルマを追い越し車線から追い抜いた先に、今度は追い越し車線をゆっくりと走っているクルマが……。しばらく後ろをついて走ったものの、走行車線に戻りそうにないので、自分が走行車線に戻って追い越しを行った――。
連休中や帰省シーズンになると、追い越し車線を走り続けるクルマをよく目にします。
原則として、追い越しは“右側の車線”から行わなくてはならないため、上記の追い越しは「追い越し方法違反」に該当します。走行車線に戻ってほしい気持ちはわかりますが、存在に気付いてもらうためクラクションを鳴らす、パッシングといった行為は「あおり運転」とみなされる可能性もあります。無理に追い越そうとせず、走行車線に戻って安全な速度で走行しましょう。
フロントウインドウにスマートフォン用のスタンドを装着
車内で聴く音楽ソースとして、スマートフォンも一般的になってきました。Bluetoothで車載オーディオやカーナビと接続して使用するものですが、操作をしやすくするため、カーシェアやレンタカーでもスマートフォンスタンドやスマートフォンホルダーを車内に持ち込み、設置する人もいるでしょう。
ダッシュボード上に固定するタイプなら問題ありませんが、フロントガラスに吸着して固定するタイプは「視界を妨げ、事故に繋がるおそれがある」という理由から、道路運送車両の保安基準により違反と定められています。同じ理由から、フロントガラスに初心者マークを貼り付けることも、保安基準違反に該当します。
スマートフォンスタンドやスマートフォンホルダー、初心者マークを使用する際は、設置場所に注意してください。なお、ドライブレコーダーなど一部の装備は、視界を妨げない定められた場所に限り、フロントガラスに吸着して固定することが認められています。
後部座席に座った同乗者にシートベルトの着用を促さなかった
「高速道路では後部座席のシートベルト着用が義務付けられているのは知っているけど、一般道だからいいよね」と、後部座席に座った同乗者が、シートベルトを着用しなかった――。
こんな風に思っている人は、今も少なくありません。現在は、一般道でも後部座席のシートベルト着用は義務付けられています。
2008年に実施された道路交通法の改正により、一般の乗用車は全座席、シートベルトの着用が義務付けられました(妊婦や怪我によりシートベルトを着用できない場合はのぞきます)。「後部座席のシートベルト着用義務は高速道路上でのみ」と勘違いしている人も多いのですが、これは高速道路の「着用義務違反」は違反点数が加算される一方で、一般道では罰則が定められていないから。けれど、交通違反として取り締まりの対象であり、口頭注意を受けてしまいます。
事故が発生した際、後部座席の乗員が車外に放り出されるといった、「シートベルトを着用しておけば防げたケース」が多数、報告されています。「違反になるから」ではなく「安全のため」に、どの席であっても必ずシートベルトを着用しましょう。
幼児がチャイルドシートをいやがったので大人に抱っこしてもらった
子どもとのドライブにチャイルドシートは必須……なのは知っているけど、嫌がるし近所だからそのままでいいか――。
気持ちはわかりますが、道路交通法第71条で「自動車の運転者は、チャイルドシートを使用しない6歳未満の幼児を乗せて運転してはならない」と定められており、ドライバーは「幼児用補助装置使用義務違反」の対象となります。
警視庁とJAF(日本自動車連盟)の報告によれば、チャイルドシートを適切に使用した状態とチャイルドシートを使用していない状態では、事故に遭遇した際のお子さんの致死率に5.3倍もの差があるそう。ぐずるお子さんがかわいそうでも、しっかりとチャイルドシートに座らせ、命を守ってあげましょう。
カレコのクルマはトランクや荷室に、小学生相当を対象としたジュニアシートを用意しており、自由に使用することができます。チャイルドシートの用意はないので、幼いお子さんを乗せて移動する場合は、各々での準備をお願いします。
ながら運転など、状況によっては違反にならない
ドライバーなら守らねばならない交通法規。しかし法規はあくまで原則であり、身に危険が及ぶおそれのある場合、法規の遵守よりも安全の確保が優先されます。
あおり運転をされた際、「ながら運転は違反」と、安全な場所にクルマを止めてから警察に通報する……、そんな余裕はありませんよね。なにより、あおり運転をされている状況でクルマを止めるのは、とても危険な行為です。このような緊急時は、運転しながら電話をしても違反とされません。
運転中に緊急性の高い事故に遭遇した際も、通報のためなら“ながら運転”は許されます。自身と同乗者の安全を確保したのち、すみやかに警察へ通報しましょう。
うっかりと、あるいは「少しくらいなら」と軽い気持ちで犯してしまう、意外な交通違反。せっかくの楽しいお出かけも、取り締まられてしまうと気分が台なしになってしまいます。しっかりと交通法規を守り、安全で楽しいドライブを!
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