運転歴が長く、運転経験の豊富な人でも、首都高を走行する際は少なからず緊張するもの。免許証を取得して日の浅い人や、日頃、首都高を利用しない人ならば、なおさらです。そこで今回は、分岐や合流など、首都高をスムーズに走るためのテクニックや注意すべき点を解説します。
<目次>
・なぜ、首都高の運転は難しい?
・まずは「首都高の仕組み」を知ろう!
・首都高の「難所ポイント」は?
・放射線はスピードの出しすぎに注意
・環状線で走るべき車線は?
・分岐や出口を間違えたらどうする?
・首都高は渋滞も多い……
・降り方にもポイントがある
・苦手克服には実践あるのみ!
なぜ、首都高の運転は難しい?
首都高の運転が難しい理由は、ほかの高速道路にはない特殊な構造や道路交通環境にあります。たとえば……
■合流のための加速車線の短さ
■左右の両方に設置される出入口
■多数の急なカーブやアップダウン
■カーブやアップダウンにともなう前方の視界の悪さ
■目的地に行くための分岐やジャンクションの多さ
■混雑や渋滞の発生頻度の多さ
■クルマの列をぬうような車線変更の必要性
■道路が英数字で表記され、走っている場所がわかりづらい
などなど、一般的な高速道路や自動車専用道路とは、異なる部分がたくさんあるのです。
まずは「首都高の仕組み」を知ろう!
首都高をスムーズに走るためには、まずはその仕組みを知っておきましょう。東名高速や中央自動車道など、ほかの高速道路と違い、首都高は2つの環状線を中心に、そこから放射状に伸びる各線により構成されています。クモの巣をイメージするとわかりやすいでしょう。
●2つの環状線
皇居を中心に、もっとも内側を走る環状線は「首都高速都心環状線」で、「C1」と呼ばれます。C1の外側を走る環状線は「中央環状線(一部、湾岸線)」で、こちらは「C2」です。どちらも、時計回りを「外回り」、反時計回りを「内回り」と呼びます。憶えておくと、交通情報のアナウンスで、渋滞や事故の発生した場所を推測しやすくなるでしょう。
●放射状に伸びる各線
C1から放射状に伸びる線は現在、10本。浜崎橋JCTから繋がる「1号羽田線」を皮切りに、基本的には時計回りに数字が割り振られています。(例外として「1号上野線」がありますが、これは1号羽田線とC1を経由してつながり「1号線」としているためです)
C2から放射状に伸びる線は現在、10本が運用されています。
放射状に伸びる各線は、C1の中央(皇居)に向かって進む側を「上り」、遠ざかる側を「下り」と呼びます。湾岸線は「B」と表記され、上り下りではなく「西行き(横浜、羽田方面)」「東行き(千葉方面)」と、方角で進行方向を表します。
首都高の基本的な仕組みと番号のルールをおぼえ、事前に目的地までのルートを調べること(C1内回りから4号へ分岐、そのまま下って中央自動車道を利用、など)で、自分の位置や標識が理解できるようになると、心の余裕を作ることができます。
なお、下の写真は、4号新宿線の上り、三宅坂JCT前に設置された標識です。「こうした標識が出てくるんだな」と、頭に入れておくといいでしょう。
ちなみに、この標識は、左の車線を進むとC1外回りに分岐し、先方に5号池袋線と6号向島線、神田橋JCTや箱崎JCTがあること。右の車線を進むとC1内回りに分岐し、先方に1号羽田線と3号渋谷線、霞が関出入口や湾岸線があることを示しています。
首都高の「難所ポイント」は?
一般的な高速道路への入口は、見通しがよく、余裕のある長さを持った加速車線が設けられ、楽に走行車線へと合流を行うことができます。一方、首都高は出入口や合流、分岐が集中し、必然的に加速車線が短く、時に急なカーブを曲がりながらの合流を行います。わずかな時間での周囲の確認や判断を要求されるため、難易度が高いのです。
首都高を利用するドライバーは、合流が難しいことを知っています。多くの人は、合流しようとするクルマを見かけたら、適切な車間距離を空けるなど、走行車線に迎え入れるよう行動してくれます。
本線に合流する場合、ほかの高速道路での合流と同じように走行車線の流れを見て加速し、ウィンカーで合流したい意思を伝えましょう。加速しきれずスピードが遅いと、走行車線にいるクルマもタイミングを図ることができず、迎え入れるための行動がとれなくなります。
ただし、首都高を走行するクルマ(ドライバー)が、技量や経験に余裕のある人ばかりではありません。緊張のあまり、合流したいクルマがあることに気付けないケースもあります。合流時に「適切な車間距離が空かない」と判断した場合は、すぐに少しだけ加速をゆるめ、1台分後ろの車間に合流するべく、気持ちと行動を切り替えましょう。
高速道路を走行しているときに、加速車線を走行するクルマを見かけたら、合流にそなえて車間距離を空ける、あるいは右側の車線へと車線変更を行います。首都高でも基本的には一緒ですが、左右の両方から合流があること、また加速車線が短いといった違いがあります。加速車線にクルマを見かけたら、すぐに合流してくると考え、迎え入れるための行動に入りましょう。
放射線はスピードの出しすぎに注意
C1の制限速度は50km/hですが、各放射線の制限速度は50~80km/hと異なります(C2の制限速度は湾岸線を除いて、概ね60km/h)。おなじ首都高でもC1から放射線に入る、あるいは放射線からC1に入ったら制限速度を変わることを、覚えておきましょう。
放射線は直線が主体で見通しが良好なため、特に環状線から分岐したあとは開放的な気分になり、スピードを出してしまいがちです。スピードを出しすぎないことと、また周囲のクルマが加速することを意識して走行しましょう。
逆に放射線から環状線に進入した場合、急なカーブの先で混雑や渋滞が発生していることが多々、あります。「カーブの先には渋滞があるかもしれない」と先々の状況を予測し、十分に用心して走行することが大切です。
環状線で走るべき車線は?
首都高に不慣れなうちは「どこで分岐すればいいのかわからない……」「出口が右と左、どちらにあるかわからない……」と、分岐や出口で戸惑ってしまうもの。事前にルート検索サイトやナビアプリ、カーナビでルートを確認し、具体的に走行する放射線の番号を確認することで、首都高の標識が理解しやすくなります。
首都高は「追い越し車線」がなく、全車線が「走行車線」と定められています。そのため「常時、右側の車線を走行してもいい」と勘違いされますが、原則として左の車線を走行しなければなりません。
分岐や出口、追い越しなど、首都高では頻繁にクルマの車線変更が行われます。自身が車線変更を行う際には、普段以上にミラーや目視で周囲のクルマを確認し、後ろや隣の車線を走るクルマとの距離や速度の差を把握してから行います。
少し前には車線変更を行うだけのスペースがあったものの、その数秒後に別のクルマが車線変更をし、自分が車線変更を行ったときにはスペースがなかった……なんて事態に陥らないよう、確認後はすみやかにウィンカーを出して、車線変更の意思を回りのクルマに伝えましょう。
分岐や出口を間違えたらどうする?
気が付いたら分岐すべきJCTが目前にあり、このままでは間に合わない……。
こんなとき、あせってしまう気持ちはわかりますが、急ブレーキをかけたり急に車線を変更したりすると、後続車の迷惑になるばかりか、ときに重大な事故を招きます。
環状線は、基本的には左の車線を走行することで、1周して元の場所まで戻ることができます。間違えたことを素直に受け入れ、もう1周して分岐するよう気持ちを切り替えましょう。仮にC1を1周走ったとしても、渋滞がなければ20分ほどです。
また、環状線から出るべき分岐を間違えても、ほとんどの場合、より外側を走る環状線(C2や東京外かく環状道路)を利用して、本来のルートに戻ることができます。
運悪く環状線に接続しない放射線に分岐してしまったら、出口から首都高をおり、一般道を利用して戻ることになりますが、そのためのルートはカーナビが自動的に示してくれますから安心を。ただし、首都高は分岐や出口を間違ったことによる、利用料金免除などの措置は実施されていないので、その分の料金はかかってしまいます。
運転の上手い人ほどカーナビのルートを外れても動じず、すぐに気持ちを切り替えて運転を続けます。間違えたことで焦り、落ち込んでいては、判断や安全運転に支障が生じてしまうもの。最初から、「万が一分岐で間違えても大丈夫」と思えれば、緊張感もやわらぐというものです。間違えても落ち着いてリカバリーを行えるよう、時間には余裕をもって行動しましょう。
首都高は渋滞も多い……
交通量の集中する首都高は、頻繁に混雑や渋滞が発生することでも知られています。それまで順調に流れていたのに、カーブを曲がったらいきなり渋滞……ということも、珍しくありません。
首都高のいずれかで渋滞が発生した際は、電子掲示板に情報が表示されます。進みたいルートに影響する渋滞かを判断するため、事前にルートを確認しておくことは有効です。渋滞前には混雑することが多いので、交通量が増えたら渋滞を予測し、スピードを落として走行しましょう。
気をつけなくてはいけないのは、渋滞中の追突事故。前後や隣車線のクルマと同じゆっくりとしたスピードで走る渋滞時は、進んでいる感覚がわかりづらくなります。そのため、前のクルマが止まったときに気づかず追突……という事故が起こりやすいものです。
「動いている感覚」に意識すると同時に、前走車に追突せぬよう車間距離に注意して、停車中はクリープで進まないよう、しっかりとブレーキを踏み込みましょう。
渋滞追従機能のついた「アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)」は、前走車が停車すると、一定の距離をあけて停車。前走車が発進すると、追従して発進する、便利な運転支援機能です。割り込んできたクルマにも対応し、自動で減速して車間距離をあけてくれます。ぜひ活用し、より安全な運転に役立ててください。
ただし、車種により渋滞追従機能がないACCもあります。また、速度が30km/h以下になると機能がキャンセルされ、自分でブレーキを踏む必要のあるタイプもあります。詳しくは車載の操作マニュアルでご確認ください。
降り方にもポイントがある
入口からの加速車線が短い首都高は、本線を降りてからゲートまでの区間も短いもの。また、ゲートを通過したあと、すぐに信号や一時停止、合流があるケースも少なくありません。
本線を降りたら、まずは十分にスピードを落として安全な速度でゲートへ。そして、ゲート通過後は、信号や一時停止、合流などがないかをよく確認してから、進むようにしましょう。また、一般道におりた直後は、首都高を走行していたときのスピード感が残っています。スピードを出しすぎないよう気をつけることも大切です。
苦手克服には実践あるのみ!
一般道や、ほかの高速道路との違いから、「怖い」「難しそう」と苦手意識を持たれがちな首都高。けれど基本的な構造を知り、事前にルートを確認しておくことで、不安をやわらげることができます。
実際の走行でも、ポイントを知って心構えをしておけば、落ちついて運転することができますから、まずは今回紹介したポイントを頭に入れて、実践してみてください。首都高の苦手を克服すれば、ぐんと行動範囲が広がって、ドライブが楽しくなりますよ!
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