ドライブの知識

【運転の苦手克服】クルマのプロが教える「車両感覚のつかみ方」

すれ違いで緊張する、狭い道の右左折が怖い、駐車が苦手――。

運転に慣れない人や苦手意識のある人の多くは、車両感覚や車幅感覚に不安を持っています。では、どうしたら感覚をつかむことができるのでしょうか?

軽自動車からスーパーカーまで日々、いろいろなクルマに乗りクルマを評価する、モータージャーナリストの工藤貴宏さんにお聞きしました。

<運転の達人>
工藤貴宏さん
クルマが好きすぎて大学時代に自動車雑誌の編集部でアルバイトをはじめ、大学卒業後はそのまま就職。その後独立してフリーランスのモータージャーナリストとなり、雑誌やWebで自動車の記事を執筆。海外でのドライブも大好きで、アメリカでは1週間で3,000km走ったことも。

<目次>
安全には「賭けに出ない」が大事
初めて乗る車種で気をつけていることは?
車両感覚のつかみやすいクルマってある?
「車幅感覚」をつかむポイントやコツ
右左折時に気をつけるポイントは2つ
駐車の感覚をつかむカギは「後輪」の位置
道幅の狭い道ではドアミラーを活用
駐車場ではギリギリまで粘らない
怖がらないでどんどん運転しよう!

安全には「賭けに出ない」が大事

こんにちは、工藤貴宏です。モータージャーナリストとして、年間60車種くらいのクルマに試乗しています。その中には、小さいクルマも大きいクルマも、運転しやすいクルマもそうでないクルマもありますが、どのクルマを運転するにあたっても最優先は「安全が一番大事」で、そのために常に心がけているのは、「賭けに出ない」ということです。

たとえば、見通しの悪い状況でわき道から優先道路へ入る際は、「たぶんクルマは来ていないだろう」ではなく、「クルマが来るかもしれない……」と思って念入りに、「これでもか!」というくらいに確認するといったこと。安全な運転って、そうしたことの積み重ねなんです。

車両感覚のつかみ方についても、「賭けに出ない」は大切です。たとえば、駐車するシーンを思い浮かべてみてください。ハンドルを切りながらバックしていくと、車両後部のカド(右後端または左後端)の様子は、バックモニターがあってもわかりづらいですよね。

ミラーでも目視でも、車体後方の角を把握するのは難しい
ミラーでも目視でも、車体後方のカドを把握するのは難しい

こうした「周囲のクルマと接触するか微妙な状況(だけど目視確認はできないから推測するしかない)」という状況は、駐車時に限らず、クルマを運転していると日常的にあるものです。

そんなとき、「きっと接触しないだろう」と根拠なき賭けに出るのはNG。迷ったときには、「接触するかもしれないから、もう一度切り返えそう」と余裕をもった安全な判断をするのが賢明です。

「冒険はしない。根拠なき賭けには出ない」、これがアクシデントを避けるための大前提だと思っています。

>>>久しぶりの運転で気をつけることは? 7つのポイントでおさらい

初めて乗る車種で気をつけていることは?

初めて乗る車種では、まずクルマに乗り込む前に車体をよく確認するようにしています。

「車体サイズが小さいのか? それとも大きいのか?」「前後のバンパーやフェンダー(タイヤの周囲のボディパネル)の形状はどうなっているのか?」そういった部分を見ています。

バンパーは、左右端のカドが丸まっていれば(気持ち程度ですが)擦りにくいし、フロントバンパーの下が低い場合は、前から駐車すると縁石にバンパーの下を接触する可能性だってある。また、一部のスポーツカーやスーパーカーのように後輪のフェンダーが大きく外側へ張り出している場合は、曲がるときに内輪差でぶつけてしまうこともあります。

同じコンパクトSUVでも奥の「ライズ」と手前の「ヤリスクロス」では形状が大きく違う
同じコンパクトSUVでも奥の「ライズ」と手前の「ヤリスクロス」では形状が大きく違う
「GR86」を後方から見ると、後輪のフェンダーが張り出していることがわかる
「GR86」を後方から見ると、後輪のフェンダーが張り出していることがわかる

こうして、まずは「クルマの形や特徴」をチェックすると安心です。カーシェアのユーザーさんなら、よく利用する車種でも、改めて見てみると意外な発見があるかもしれません。

運転席に座ったら、シート位置を調整してドライビングポジション(運転姿勢)を決め、ミラー類を調整します。運転姿勢がしっかり定まっていないと、正しい運転操作はできませんからね。ここでのポイントは、「しっかりブレーキペダルが踏み込めるか?」「シートから背中が離れることなくハンドルを回せるか?」です。

ブレーキペダルやハンドルの操作が無理なくできるポジションを見つけよう
ブレーキペダルやハンドルの操作が無理なくできるポジションを見つけよう

ゴルフや水泳といったスポーツもそうですし、書道のような芸術だって、結果を出すためにはフォームとか姿勢が重要。それと同じで、車両感覚をしっかりとつかむためにも、正しい運転姿勢は大切です。

>>>自分に合ったドライビングポジションで快適&安全ドライブ

車両感覚のつかみやすいクルマってある?

大きさも形もさまざまですから、やはり「車両感覚のつかみやすいクルマ」はあります。

狭い道や駐車時の話であれば、やはり小さいクルマです。小さいクルマは、運転席から車体四隅までの距離が短く、それが車両感覚のつかみやすさにつながっています。

車体サイズが同じぐらいのクルマなら、視界が広いクルマの方が車両感覚はわかりやすいし、丸いクルマよりも四角いクルマの方がいい。

丸っこいクルマは横風の影響を受けにくいといったメリットも多い反面で……(写真はヤリス)
丸っこいクルマは横風の影響を受けにくいといったメリットも多い反面で……(写真はヤリス)
車両感覚のつかみやすさという点では、四角くて窓も大きなクルマの方が良い(写真はムーヴキャンバス)
車両感覚のつかみやすさという点では、四角くて窓も大きなクルマの方が良い(写真はムーヴキャンバス)

極論を言うと、丸みを帯びて視界が狭いスポーツカーは不利で、四角い車体で視界良好のミニバンなら有利と言えるでしょう。

それから、前方の感覚のつかみやすさに限定すれば、運転席からボンネットがよく見えるクルマはわかりやすいですね。ボンネットが直線的で最前部まで見えれば、狭い道や駐車時だけでなく、広い道を運転していても不安感が少ないものです。

「ヤリスクロス」の運転席から。ボンネットが見えるため、前方の感覚がつかみやすい
「ヤリスクロス」の運転席から。ボンネットが見えるため、前方の感覚がつかみやすい

そして、最強のサポートアイテムといえるのが「全方位カメラ」や「360度カメラ」と呼ばれる、前後左右のカメラでとらえた映像を合成してナビ画面に映すシステム。車両の周囲が一目瞭然だから、車体が大きなクルマだって、窓からの視界が悪いクルマだって気にする必要がありません。

「クロストレック」に搭載されている全方位カメラの一例。周囲の状況が一目瞭然
「クロストレック」に搭載されている全方位カメラの一例。周囲の状況が一目瞭然

>>>「クロストレック」の詳しい解説はこちら

車幅感覚をつかむポイントやコツ

すれ違いや駐車時に不安な車幅感覚を身に付けたいとき、誰かの助けを借りることでできるいい方法があります。それは、自分は運転席に座って、もうひとりに車体の左側に立ってもらうこと。

まずは、クルマの左前のカドに立ってもらい、その位置を運転席からどう見えるかを確認します。

車両周囲のいろいろな場所に立ってもらって、見え方や距離感をたしかめてみよう
車両周囲のいろいろな場所に立ってもらって、見え方や距離感をたしかめてみよう

そこから、助手席側側面を車体最後部まで少しずつ移動してもらい、感覚を確認していきます。もしも、誰かの助けが借りられないときは、自転車などをクルマの横においてみるのも手です。

また、運転中のトレーニングとして、高速道路などにある「踏むと音が出る路側線」を活用するのもいい方法です。

「路側線」とは車線の左側にあって車線と路肩を隔てる白線のことで、高速道路などには細かい凹凸をつけて踏むと音が出るタイプ(ドライバーに車線からはみ出すことを注意喚起するのが目的)があるのです。

正式には「ランブルストリップス」という波状加工された路面
正式には「ランブルストリップス」という波状加工された路面

周囲にクルマがいない状況であることが前提ですが、あえて左側の路側線に車体を近づけて音が鳴らないギリギリのポイントを探るのです。走行しながら体感的に車幅を感じられます。

ここまでは、助手席側側面の感覚のつかみ方をお伝えしましたが、それに比べれば運転席側の感覚をつかむのはとっても簡単。だって、運転席側は感覚に頼らなくても目視できるのですから。目視する際は、駐車時など低速域であればミラーに頼らず、窓を開けて直接見るのがいいでしょう。

>>>「センターライン」の種類(白、オレンジ、破線)と意味をおさらいしよう

右左折時に気をつけるポイントは2つ

右左折時に気にするポイントは、ふたつ。ひとつは車体前方(フロントバンパー)の外側(右折時なら左側、左折時なら右側)の位置。もうひとつは内側(右折時なら右側、左折時なら左側)のフロントタイヤからリヤタイヤまでの側面です。

左折のときなら左側面の「巻き込み」に注意する
左折のときなら左側面の「巻き込み」に注意する

特にクルマの運転に慣れてきたころは、内側側面を忘れがちなので要注意。ここのチェックを怠ると、「内輪差」により車体側面に傷をつけてしまいます。

駐車の感覚をつかむカギは「後輪」の位置

駐車や後退は「とりあえずやる」ではなく、「そのスペースにクルマを収めるにはどう動けばいいか」をまず考えることが、上達への最短ルート。

大切なのは後輪の軌跡で、後退時は「後輪がどこを通るのか」「後輪がどこへ収まるか」を常に頭に置きましょう。後輪の位置をコントロールするために、ハンドルを動かすような感覚です。このときドアミラーを少し下向きに調整して、駐車枠の線と後輪の位置を見ながら後退していくといいですね。

後輪がどこへ収まっていくのかをイメージしながらハンドル操作をする
後輪がどこへ収まっていくのかをイメージしながらハンドル操作をする
ミラーを下向きに調整すると駐車枠(線)が見えて感覚がつかみやすい
ミラーを下向きに調整すると駐車枠(線)が見えて感覚がつかみやすい

そうはいっても、後輪がたどる軌跡をイメージするのは、少し難しいかもしれません。そこでオススメしたいのが、ミニカーやラジコンを使ってシミュレーションすること。

できればハンドルが切れる(タイヤが曲がる)ミニカーを使い、運転が上手な人のアドバイスを受けながらハンドルの切り方と後退時の進む方向の距離を覚えるのです。ミニチュアのクルマでうまくバック駐車できるようになれば、実車でもきっとうまくいくことでしょう。

ミニカーを使うと、どのように動くのか、どこに注意すべきかが見えてくる
ミニカーを使うと、どのように動くのか、どこに注意すべきかが見えてくる

>>>ミニカーを使った駐車テクニックの解説はこちら

道幅の狭い道ではドアミラーを活用

狭い道を走る際は、助手席側側面(助手席側のタイヤ)と路肩の関係をどれだけ把握できるかがポイント。ここで、先ほどトレーニングした助手席側の車幅感覚の把握が生きてきます。その際に活用したいのが、ドアミラー。後輪の地面と接する部分が見えるように調整すれば、路肩とタイヤの位置関係がわかりやすくなります。

後方がしっかり見える範囲で少し下向きにすると車幅感覚のつかみやすさにつながる
後方がしっかり見える範囲で少し下向きにすると車幅感覚のつかみやすさにつながる

狭い道での右左折では、速度を落として「できるだけ大回りすること」がポイントとなります。大回りすることで、内側の側面が接触するリスクを減らせます。

気を付けるポイントは、さきほど「右左折の感覚をつかむコツ」で伝えたように「車体前方の外側」と「内側の前輪から後輪までの側面」です。内側の面に関しては、ドアミラーを見れば目視可能。だから、狭い路地を曲がるときは、曲がる方向に対して内側のドアミラーをしっかり確認する癖をつけましょう。

駐車場ではギリギリまで粘らない

駐車時のポイントは、リヤタイヤの位置と軌跡をイメージし、切り返すタイミングを見失わないこと。

「切り返し」とは、バック駐車時に一旦、前へ出てクルマの向きを整えることですが、狭い場所での駐車における切り返しは「ギリギリまでしないで頑張る」のではなく、そのあとの流れが楽になるように、「適切な位置で行う」のがコツ。

「違うかも」と思ったら早めに切り返しした方が軌道修正しやすい
「違うかも」と思ったら早めに切り返しした方が軌道修正しやすい

ギリギリまで粘っても、その後の流れに無理が出て、何度も切り返しをする必要に迫られます。駐車がスムーズな人は、そのタイミングの見極めがとても上手。

同時にミラーやカメラを駆使して、駐車スペースと自分が運転している車両との位置関係を把握するよう意識しましょう。空間を認識すること、これが駐車をスムーズに行う近道です。

バックモニターも積極的に活用する。ただし、あくまでもミラーや目視の補助と考えて
バックモニターも積極的に活用する。ただし、あくまでもミラーや目視の補助と考えて

>>>初心者のための駐車テクニック「停められない」をなくすポイント

怖がらないでどんどん運転しよう!

車両感覚をつかむ。それは、運転初心者や運転が苦手な人にとっては難しいことかもしれません。しかし、それを身に付けなければ、運転がうまくならないのもまた事実。

安全を最優先に考えたうえで、怖がらずにどんどんクルマを運転してみましょう。その際は、運転の上手な人に同乗してもらい、アドバイスや安全確認のサポートを受けるのが上達への近道。

いろいろな車種に乗れるカーシェアのメリットを活用して運転上達へ!
いろいろな車種に乗れるカーシェアのメリットを活用して運転上達へ!

車両感覚は基本的に“慣れ”ですから、少しでも運転する時間や機会を増やすことが大切です。思い出してみてください。自転車の乗り方を覚えたときも、そうではありませんでしたか?

カーシェアならいろいろな車種に乗れますから、車種による違いを体感したり、乗りやすいクルマを見つけたりできるのがいいと思います。自分に合ったクルマを見つけて、楽しいドライブを!

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