ドライブの知識

「オートマチック車の操作」を基本から応用までマスターしよう!

P、R、N、D……。普段、なにげなく使っているAT(オートマチック)車のギアシフト。みなさんは、それぞれのポジションにどんな意味があり、その他にどんなポジションや機能があるかをどれぐらい把握しているでしょうか?

実際のところ、「すべて知っている」という人は、それほど多くないでしょう。でも、知っていると、より安全で快適、なおかつ楽しく運転できるものです。そこで、「オートマチック車の操作」を基本から応用まで、まとめました。

<目次>
そもそもATってどんな装置?
ATにもさまざまな種類がある
基本的な操作方法
各シフトポジションを覚えよう
AT車の運転するときの注意点
知っていると便利な応用機能1:パドルシフト
知っていると便利な応用機能2:ドライブモード
知っていると便利な応用機能3:パーキングブレーキ
シフトレバーが動かないときは……
機能をマスターして、より充実したドライブを!

そもそもATってどんな装置?

エンジンの生み出した回転(動力)を速度や走行状況に応じて、適切な回転数、あるいは回転方向に変えてタイヤに伝えるのが変速機(トランスミッション)という、装置。クルマになくてはならない機構です。

その「変速」を手動で行うのがMT(マニュアル・トランスミッション)、自動化したものをAT(オートマチック・トランスミッション)と言います。

 MT車のシフトレバー(6速MT)
MT車のシフトレバー(6速MT)
 AT車のシフトレバー(ストレートゲート式)
AT車のシフトレバー(ストレートゲート式)

MT車には、アクセルペダルとブレーキペダルの他にクラッチペダルがあり、ドライバーがクラッチペダルとシフトレバーを操作し、1から5速、あるいは6速までの前進用ギヤとリバース(後退用)ギヤから、適切なギヤを選んでクルマを動かします。

MT免許を取得した人なら、その操作を経験したことがあるでしょう。変速のタイミングを自動的に判断し、変速してくれるのがAT車の仕組みです。

ATにもさまざまな種類がある

アクセルペダルの踏み方や速度などから自動的に変速をしてくれるAT。運転方法に変わりはないものの、ATの中にもいくつかの仕組みがあります。一般的なのは、「ステップAT」と「CVT」です。

ステップATは、「有段=ステップ」であることが特長で、MT車のように数段階(少ないもので4速、多いものでは10速)のギヤがあります。一方のCVTは、日本語にすると「無段変速機」と言い、その名のとおり無段階の変速を行うトランスミッションです。

段のない変速はスムーズである一方、その仕組からコンパクトカーや小排気量のミドルクラスに用いられるのが、一般的。大型のクルマやハイパワーのクルマは、ステップATが中心です。

 写真の新型シエンタをはじめ、コンパクト~ミドルクラスはCVTを搭載する車種が多い
写真の新型シエンタをはじめ、コンパクト~ミドルクラスはCVTを搭載する車種が多い

ちなみに、EV(電気自動車)の場合は、変速を行わなくてもモーターが十分なトルクと回転数を発揮するため、一般的にトランスミッションは搭載していません。そのため厳密にはAT車ではないのですが、運転免許の制度上は、AT限定免許でも運転できるAT車に分類されています。

AT車の基本的な操作方法

国産車の場合、ATの操作を行う「ATセレクター(シフトセレクター)」は左手で操作できるよう、一般的にインストルメントパネルの中央や、運転席と助手席の間のセンターコンソールと呼ばれる部分に設置されます。

ただし、操作性はさまざまです。一般的なのは、シフトレバーを前後(直線上)に動かす「ストレートゲート式」と、ジグザグのゲートを持つ「スタッガードゲート式」。近年では、軽い力で操作する「電子式」も増えてきました。

他にもステアリングコラムに設置される「コラムシフト式」、「ボタン式」などがあります。

<ストレートゲート式>

 誤操作を防止するボタンがある。Pポジションに入れるときと出すとき、Rポジションに入れるときはボタンを押しながら操作する(写真は新型ヴォクシー)
誤操作を防止するボタンがある。Pポジションに入れるときと出すとき、Rポジションに入れるときはボタンを押しながら操作する(写真は新型ヴォクシー

<スタッガードゲート式>

 誤操作防止用のボタンはなく、ジグザグのゲートにより確実な操作を行う方式(写真はアルファード)
誤操作防止用のボタンはなく、ジグザグのゲートにより確実な操作を行う方式(写真はアルファード

<電子式>

 各ポジションの方向へ、レバーを動かして操作する。レバーから手を離すと、レバーは常にゲートの中央に戻るのが特長(写真は新型MIRAI)
各ポジションの方向へ、レバーを動かして操作する。レバーから手を離すと、レバーは常にゲートの中央に戻るのが特長(写真は新型MIRAI

各シフトポジションを覚えよう

ATのシフトゲートには、P/R/N/Dといったアルファベットが記され、それらを「ポジション」または「シフトポジション」と言います。各ポジションの意味は、以下のとおり。

■P:パーキング
駐車時に入れるポジションで、クルマが動かないようトランスミッションを固定する。

■R:リバース
クルマを後退するときのポジションです。「バックギヤ」とも呼ばれる。Rに入れると安全のためアラーム音が鳴るのが一般的。

■N:ニュートラル
タイヤに駆動力を伝えない(=アクセルペダルを踏んでも走らない)ポジション。何らかの事情でクルマを牽引するときに使用する。

■D:ドライブ
走行するためのポジションです。通常の走行時は、常にこのDポジションに入れておく。

ここまでは、電気自動車を含めてすべてのAT車にあるポジションです。ここから説明するポジションは、メーカーや車種、グレードによって異なります。

■S:スポーツ、あるいはセカンド
低いギヤを使って回転数を上げ、静かさや燃費よりもパワーを重視して走るときのポジション。峠道をパワフルに走りたいときや、下り坂などで軽くエンジンブレーキを使用したいときに使う。

■B:ブレーキ/L:ロー
強くエンジンブレーキをかけるため、より高い回転数で走行するポジション。アクセルペダルを離すと、強く減速することがわかる

■M:マニュアル
任意でギヤを選択したいときに使う、マニュアルモードにするポジション。一般的にMにシフトレバーを倒すと前後に+-の表記があり、シフトアップ/シフトダウンの操作ができる(ただし、減速時は自動的にシフトダウンする)

 Dポジションから横に倒すと、前後に+-に動かせる(写真はフェアレディZ)
Dポジションから横に倒すと、前後に+-に動かせる(写真はフェアレディZ

なお、AT車のメーター内には、ポジションの位置を示す「シフトポジションインジケーター」が備わります。シフトレバーやゲートを見なくてもポジションが確認できるので、走行中はシフトインジケーターでポジションを確認する習慣をつけましょう。

 中央の「P」がシフトポジションを表示するインジケーター(写真はライズ)
中央の「P」がシフトポジションを表示するインジケーター(写真はライズ

AT車の運転するときの注意点

AT車にはアクセルペダルとブレーキペダル、2つのペダルがあります。両方のペダルは、右足で操作することを前提に設計されています。まれに左足でブレーキ操作をする人がいますが、右足での「踏み変え操作」が基本です。

ペダルの踏み間違いによる事故が、たびたび報じられるのをご存じの方もいいでしょう。ペダルは漫然と操作せず、特に発進時と後退時は意識してアクセルペダルとブレーキペダルを慎重に操作するようにしてください。

 かかとをしっかり床につけて、右足で2つのペダルの操作する(写真はフェアレディZ)
かかとをしっかり床につけて、右足で2つのペダルの操作する(写真はフェアレディZ

一般的なAT車は構造上、アクセルペダルを踏まなくてもわずかに前進する「クリープ現象」が発生します。ブレーキペダルを踏む力が緩むと、クリープ現象でクルマが進んでしまうのでご注意を。

信号待ちでブレーキペダルへの力が緩み、気がついたら前のクルマに追突……、という事故も現実に起きていますから、停車中も気を抜かないようにしましょう。

また、近年は電動パーキングブレーキを採用するクルマが増えました。Pポジションに入れることで、車種により自動的にパーキングブレーキがかかるものがあります。

 電動パーキングブレーキのスイッチはシフトレバー周辺に設置される(写真はレヴォーグ)
電動パーキングブレーキのスイッチはシフトレバー周辺に設置される(写真はレヴォーグ

とても便利ですが、一方でそれに慣れてしまうと、他のクルマに乗ったときにパーキングブレーキをかけ忘れることもありますから、クルマを降りる前にはパーキングブレーキの作動を表す赤いランプがメーター内に点灯していることを確認するクセをつけるといいでしょう。

知っていると便利な応用機能1:パドルシフト

ハンドルの奥に+-の表示があるパーツがついていたら、それは「パドルシフト」です。このパドルを手前に引くことで、それぞれシフトアップ/シフトダウンができ、マニュアルモードでの操作がハンドルから手を離すことなくできます。

 スイッチの上、奥に見えるのがパドルシフト。左がシフトダウン(-)、右がシフトアップ(+)(写真はシビック)
スイッチの上、奥に見えるのがパドルシフト。左がシフトダウン(-)、右がシフトアップ(+)(写真はシビック

シフトレバーをMポジションにしなくても(Mポジションがない車種もある)、パドルを操作すれば一時的にマニュアルモードになり、自由な変速が可能です(減速時はパドルを操作しなくても、自動的にシフトダウンする)。しばらくパドル操作をせずに走行するか、+-のパドルを同時に引くことでDポジションに復帰します。

車種によりシフトレバーをMポジションする、あるいはドライブモードでスポーツモードを選ぶことで、マニュアルモードを維持します。

知っていると便利な応用機能2:ドライブモード

基本的には、各ポジションを知っていれば問題なくドライブはできます。ですが、AT車には活用すると便利な機能や運転が楽しくなる機能が、多く設定されています。

トヨタ「カローラクロス HYBRID」を例にすると、ATセレクターの上(奥側)に「ドライブモードセレクトスイッチ」と「EVドライブモードスイッチ」、「VSC OFFスイッチ」が、下(手前側)に「ブレーキホールドスイッチ」と「パーキングブレーキスイッチ」が配置されています。

ドライブモードセレクトスイッチを押すと、ノーマルモード/パワーモード/エコドライブモードが切りかわり、それぞれ変速タイミングやアクセルペダルの反応、エアコンの効きが変わります。

左からEVドライブモードスイッチ、VSC OFFスイッチ、ドライブモードセレクトスイッチ(写真はカローラクロス HYBRID)

ノーマルモードにしておけば、どんな走行状況にも対応できますが、峠道で走行を楽しみたいときはパワーモードに、少しでも燃費を良くしたいなと思ったらエコモードにと、シーンにあったモードを選ぶことで、快適で楽しく走れます。

EVモードはハイブリッド車ならではのスイッチで、押すとエンジンを使用せず電気モーターのみで走行することがきます。排ガスを出したくない屋内駐車場の出し入れや、深夜や早朝の出発といった、エンジン音や排気音を出したくないときに利用します。ただし、長距離は走れず、バッテリーがフルに充電されているときでも、最大で1kmです。

中央のスイッチは、「VSC(横滑り抑制機能)」をOFFにするスイッチですが、通常の走行では安全のためONのままで走行しましょう。OFFにするのは、ぬかるみや積雪によってタイヤが空転している状況では、VSCが脱出の妨げになる場合のみです。

知っていると便利な応用機能3:パーキングブレーキ

電動パーキングブレーキ装着車の多くには、「ブレーキオートホールド」という機能がついています。シフトレバー周辺にある「HOLD」のボタンが、そのスイッチです。

 「HOLD」がブレーキオートホールドのスイッチ。シフトレバー周辺にある(写真はアルファード)
「HOLD」がブレーキオートホールドのスイッチ。シフトレバー周辺にある(写真はアルファード

ONにすると、ブレーキを踏んで停車したあと、ドライバーがブレーキペダルから足を離しても、そのままブレーキが保持されます。坂道発進での安心感を高めたり、渋滞時の披露を低減したりする機能です。

発進するときは、通常どおりにアクセルペダルを踏めばOK。スイッチを操作してOFFにしない限り、ブレーキオートホールド機能は作動し続けます。

ブレーキオートホールドが作動しているときは、メーターパネルのディスプレイに、システム作動中のアイコンが表示されますので、機能を使用するときはこの表示の確認を忘れずに。

なお、ドライブモードやブレーキオートホールド機能は、メーカーや車種により機能の有無や内容、操作方法が異なります。詳しくは、車載の取扱説明書でご確認ください。

シフトレバーが動かないときは……

AT車のシフトレバーは、誤発進を防止するため、ブレーキを踏んでいないとPポジションから動かないようになっています。電子式の場合、レバーは動いてもポジションは変わりません。しっかりブレーキを踏んで、操作してください。

 安全のためにも停車時はしっかりブレーキを踏んでシフト操作をしよう
安全のためにも停車時はしっかりブレーキを踏んでシフト操作をしよう

ブレーキを踏んでいるのにシフトレバーが動かないときは、ブレーキランプやブレーキ系統にトラブルが発生していることが考えられます。サポートサービスへ連絡し、指示をあおぎましょう。

ちなみに、シフトレバーがPポジションに入っていないと、エンジンスタートボタンを押してもエンジンはかからないし、かかっている場合は止まりません。エンジンがかからない、または止まらない場合は、確実にPに入っていることを確認します。

機能をマスターして、より充実したドライブを!

P、R、N、Dの4つのポジションを知っていれば、運転できるAT車。でも、その他にもポジションはあり、またさまざまな機能が備わっています。

ブレーキオートホールド機能で運転の負担を軽減したり、マニュアルモードやパドルシフトで峠道を小気味よく走ったり、各機能を活用することで、よりドライブを楽しんでくださいね!

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